研究室にいる周りの同期が次々と受賞するなか、自分だけがなかなか学会発表で受賞できなくて悩んでいる人はいませんか?
具体的な対策やメリットも教えてもらえないのに、
「修士まで行くなら一つくらいは受賞してよ」
「受賞できないと奨学金返還免除は厳しい」
と先輩や教授から言われても、雲を掴むような曖昧な目標でやる気も出ないですよね。
そのように悩んでいるあなたのために、学会賞を受賞するメリットと受賞確率を上げる発表のコツを用意しました。
ここで紹介するのは、偏差値が低い地方大学に通っていた平凡学生の私が、大学院で合計8件受賞された多くの大学生/大学院生に適用できるノウハウです。
本記事を読むことで、「受賞」という目標に対してやる気を持って正しい方向に努力することができるようになりますよ。
本記事を読んで一人でも多くの大学生/大学院生に学会賞を勝ち取って欲しいと願っています。
学会賞を受賞するメリット
そもそも受賞することの利点や活用先を知らなければ、頑張って賞を取りにいこうと思いませんよね?
せっかく賞を取っても、上手く活用しきれずに卒業してしまう学生さんも少なくありません。
受賞することのメリットには以下の6点があります。
それでは順番に解説していきますね
メリット①:就職活動で有利になる
学会賞受賞のメリット1つ目は、「就職活動で有利になること」です。
研究活動における受賞業績は、企業から高く評価されます。
まず、就職活動時に提出する履歴書の「受賞歴」欄に記載し、他の学生に対する差別化を図ることができます。
受賞歴に1つでも実績を書くことができる学生は非常に少ないため、大きく差をつけるポイントとなります。
また、面接やエントリーシート(ES)の内容に説得力を持たせるための根拠としても活躍します。
面接やESにおける自己PRでは、「何を考え、どのように行動し、その結果どのような成果が得られたのか」を説明することで説得力が増します。
色々試行錯誤し、具体例(自分の体験)を入れるようにしたところ書類選考を突破できるようになり、その後の面接も順調に選考を突破し、結果、内定をいくつかもらうことができました。
【就活】元採用担当が教える一次選考を突破するための履歴書・ESの志望動機の書き方ー日本語教師の歩き方
あなたの体験、取り組みが客観的な評価(=受賞)に結びついていれば、しっかりとした考え方を持ち、適切な行動ができる人であると面接官を納得させることができるのです。
なんとなく理解はできますが難しいですね…
自己PR例を見てみましょうか
私は、物事をわかりやすく伝えることにこだわりを持っています。
研究活動においては、多くの人に自分のアイデアを理解してもらい、多様な意見に対して矛盾のない論理を構築することが重要であると考えております(考え方)。
そこで私は、学会発表や共同研究打ち合わせの際、事前に徹底的な発表資料の作り込み、意見聴取、発表練習を行なうことで、わかりやすい資料、発表にすることにこだわり抜いてきました(行動)。
そのような取り組みの結果、相手に伝わりやすい説明の仕方や、図面作成能力が身につきました(結果)。
また、その成果が認められ2件の学会発表において優秀発表賞を受賞することができました(客観的成果)。
以上の経験を活かし、貴社への入社後も「伝える」ことにこだわりを持ち自社製品の魅力を最大限伝えるための努力を続けることで、お客様の日常生活をアップデートすることに貢献したいと考えております。
いかがでしょうか?
もし、赤文字で記載した「受賞」という客観的に認められた成果が抜けてしまうと、自分の行動に対する成果の裏付けがなくなり、面接官に「本当に正しい考え方、成果なのか?」を理解してもらえなくなります。
受賞という大きな実績があれば、あとは適切な行動で就活を効率よく進めることで、短期間で優良企業から内定をもらえる確率をぐっと引き上げることができますよ。
メリット②:奨学金返還免除に近づく
学会賞受賞のメリット2つ目は、「奨学金返還免除に近づくこと」です。
日本学生支援機構の大学院生向け第一種奨学金(貸与型)では、業績を多く獲得した優秀な学生に対する返還免除(全額or半額)制度を設けています。
この業績評価の項目には、学術論文の執筆や特許、学会発表、受賞など様々なものがあります。
受賞は比較的高くポイントが設定されている場合が多いので積極的に狙っていきたいですね。
メリット③:申請書の業績欄を埋められる
学会賞受賞のメリット3つ目は、「申請書の業績欄を埋められること」です。
博士課程に進む人は、日本学術振興会の特別研究員(DC1、DC2、PD)や民間財団研究費の申請をすることもあるかと思います。
それらの申請書には、研究者としての能力をアピールするために自分の業績を記載する欄があります。
基本的には学術論文が最も重要視されますが、受賞も客観的に評価されたという成果として高く評価されるのです。
特に、修士2年春の段階で申請しなければならないDC1は、アクセプトされた学術論文が1本もないという人も少なくなく、受賞も重要な業績となってきます。
メリット④:学位取得に近づく
学会賞受賞のメリット4つ目は、「学位取得に近づくこと」です。
学位認定基準は学部ごとに異なりますが、指導教員の立場からすると受賞するくらい成果を出している人の学位を認めないことはほとんど無いのではと思います。
少なくとも私は身の回りで「受賞したのに卒業できなかった」という話は聞いたことがありません
各分野の専門家に評価された研究内容が、専門家でもない学内の審査員によって不認定となることが起こることはそうそう無いでしょう。
そういう意味でも、一つでも賞を取っておくことでその後の研究が上手くいかないといった不測の事態に対する保険にもなるのです。
メリット⑤:資料作成能力や論理的思考力が鍛えられる
学会賞受賞のメリット5つ目は、「資料作成能力や論理的思考力が鍛えられること」です。
受賞を狙って研究に取り組む過程で、社会人として必須の資料作成能力や論理的思考力といったスキルが身につきます。
徹底的に自分の発表スライドをブラッシュアップすることによって、相手に伝わる資料作成のコツ(構成や図面)が分かるようになるのです。
スライド作成では視覚的に論理を組み立てていくことになりますので、より効果的に論理的思考力を伸ばすことができます。
論理的思考はパズルを組み立てるようなもので、コツが分かれば誰でも習得することができますよ
メリット⑥:ポジティブに研究を進められる
学会賞受賞のメリット6つ目は、「ポジティブに研究を進められること」です。
賞を持っていることで精神的にも余裕ができ、やる気を持ってポジティブに研究を進められるようになります。
ポジティブに研究を進められると、俯瞰的に研究活動を見つめることができるようになります。
その結果、給付型奨学金や他の業績、スキル獲得に力を入れはじめ、最終的にそれらの成果がつながって良い循環が生まれるようになります。
私も賞を一つ取ってから「この業績を使って奨学金申請書のネタにしよう」とか「次は論文執筆にチャレンジしてみよう」と思うようになりました
受賞することは単なる1つの業績というだけではなく、その他の「お金」や「スキル」の獲得にも直結するんですね
学会賞受賞のコツ
ここまでで受賞を目指すことのメリットを理解してもらえたかと思います。
ここからは、これまでコンスタントに賞を取得してきた経験をもとに、私が築き上げてきた受賞ノウハウを紹介していこうと思います。
以下の要点を押さえれば、受賞される可能性をグーンと引き上げることができますよ
それでは、各項目の詳細を紹介していきますね。
コツ①:【学会】小規模な学会に出る
学会賞受賞のコツ1つ目は、「小規模な学会を狙うこと」です。
競争相手の少ない、あるいは比較的参加者のレベルが低い学会で発表すると表彰される可能性が高くなります。
特に、地方では小規模な支部講演会が多数開催されており、そこでは高い確率で受賞を狙えます。
大きな学会で受賞しないと高く評価されないんじゃないの?
いえ、実はそうでもないんですよ
これまでに紹介した奨学金返還免除、就活、学位取得などでは、どんな学会の賞であっても評価点数としては平等に設定されることが多いのです。
したがって、学会の種類にこだわらず分野の近い学会には積極的に参加し、賞審査にエントリーし続けることが効果的な戦略となります。
コツ②:【形式】ポスター発表賞を狙おう
学会賞受賞のコツ2つ目は、「ポスター発表賞を狙うこと」です。
学会での発表形式には、大きく分けて「口頭発表」と「ポスター発表」の2種類が存在します。
このうち、私はポスター発表のほうが高い確率で受賞できると考えています。
なんでポスター発表のほうが受賞しやすいのでしょうか?
質疑応答で自分のやる気をアピールしやすいという点が一番大きな理由ですね
学会発表に対する作業は、大きく分けて「発表資料作成」、「発表練習」、「本番発表」、「質疑応答」の4つに分解できます。
この4つの重要度をパーセンテージで表すと以下のようになると考えています。
口頭発表の場合
- 「資料作成」・・・50%
- 「発表練習」・・・15%
- 「発表本番」・・・5%
- 「質疑応答」・・・30%
ポスター発表の場合
- 「資料作成」・・・40%
- 「発表練習」・・・5%
- 「発表本番」・・・5%
- 「質疑応答」・・・50%
えっ?!発表本番はたったの5%なんですか?
そう、本番発表は本質的にはそこまで重要ではないんです
ここで、とある学会の座長を行なった際に見た学生賞の審査項目は以下のようになっていました。
- 論理展開の妥当性
- 発表資料の完成度
- 独創性、新規性
- 発表者の理解度
これらの項目が各5点満点で評価され、それらの合計点が一番高い人に賞が与えられます。
この中で「①論理展開の妥当性」と「②発表者の理解度」は、スライド作成時点でほぼ100%決まっています。
話す内容、見せる内容は事前に決まってますもんね
残りの2つの項目「③独創性、新規性」と「④発表者の理解度」は質疑応答で評価される部分が大きいです。
具体的な考え方や対応方法は後ほど詳説しますが、楽しんで研究をしているという雰囲気をいかに伝えられるか?が評価ポイントを引き上げるポイントになります。
発表時間の大部分が質疑応答になるポスター発表ではこのやる気アピールがしやすくなるため、高い確率で受賞することができるのです。
コツ③:【資料】ワンストーリーで説明する
学会賞受賞のコツ3つ目は、「ワンストーリーで説明する資料を作ること」です。
高く評価されたい!と思って、あれもこれも実験をして色々なデータが出ました!という発表をしようとする人もいますが、それは賞を狙う上では逆効果になります。
審査員も含めた聴衆は、あなたの発表の中で「小さくても何か面白い新たな発見があったのかな?」ということを期待して聞きに来てくれます。
それにも関わらず、話が散らかった論理の繋がっていない発表であった場合、話を聞こうとする気がなくなってしまい審査員の評価も下がってしまいます。
そうならないためにも、主張は「ほんの小さな発見1つ」だけでよいので、その1つの主張に繋がるようなワンストーリーを組み立ててみてください。
- 大きな背景(研究対象紹介、製品応用先など)
- 小さな背景(過去の文献紹介など)
- 核心となる課題、本研究の目的
- 研究方法
- 研究結果(考察に繋げるための補強データ含む)
- 考察(発見したことの重要性、意義を1文で入れ込む)
- まとめ(目的、結果、考察、重要性を各1~2文ずつ程度で箇条書き)
これらの項目全てにおいて、無駄な説明を省き重要な事柄は繰り返して説明することで、本当に伝えたい主張がクリアになってきます。
こうすることで聴衆も話についていきやすくなり、質疑応答で的はずれな質問をさせなくする効果もありますよ
各項目の詳細については予稿作成のコツを紹介した記事でも紹介していますので、興味をお持ちの方はあわせてご覧ください。
コツ④:【練習】聴衆に目線を向けられるように
学会賞受賞のコツ4つ目は、「発表練習により聴衆に目線を向けられる余裕を作ること」です。
発表練習では、スライドをほとんど見ずに常に聴衆に目線を向ける余裕ができるまで練習をやり込むことでが重要です。
これによって聴衆に自信のある発表内容だと思わせ、独創性や発表者の理解度といった評価項目の点数が高くなります。
発表練習をやり込んでないと、ついスライドばかり見て話してしまいますからね
コツ⑤:【本番】制限時間は厳守する
学会賞受賞のコツ5つ目は、「本番で制限時間を厳守すること」です。
口頭発表の場合、実は最も重要な採点項目と言われているのが「制限時間」です。
1分以上制限時間を超えたり早く終わってしまうと、「全然準備をしてこなかったんだな」と思われて全体的な評価点が下がってしまいます。
特に、過度な時間オーバーになってしまった場合、聴衆に与えられた質疑の時間、権利が奪われることになるため心象が悪くなり低評価点数につながります。
ポイントを押さえた適切な発表練習をすることで発表の制限時間を大きくオーバーすることはなくなるので、是非聴衆を見ることができるまで練習してみてください。
制限時間を守ることは最低限のマナーなんですね…気をつけます
コツ⑥:【質疑】楽しんで研究していると思わせる
学会賞受賞のコツ6つ目は、「自分が楽しんで研究していると質疑応答で聴衆に思わせること」です。
最後のポイントになりますが、質疑応答の際に楽しんで研究をしているんだという様子を演じて見せることで受賞の確率を大きく引き上げる事ができます。
正直このことを言いたくて本記事を書いたと言っても過言ではありません。
- 自分が普段から考えて実験をしている雰囲気を出す
- 質問されたことを質問者の提案として捉え、自分の研究に取り入れようとする姿勢を見せる
- 楽しんで研究をしているんだなと聴衆に思わせる振る舞いをする
これらを演じきることができれば、
「ああ、この人は普段から次のアイデアを自ら考え研究をしているんだな」
「自分で考え続けているということは発表内容の理解は当然できていて、その上でまだわからないことをこの学会で議論したいんだな」
と思わせ、「独創性、新規性」「発表者の理解度」という複数の採点項目の点数を引き伸ばすことができます。
そうは言われても、具体的にどんなふうに対応すればいいかわかりません…
そうですね。少しコツと慣れが必要だと思いますので、例を紹介していきますね
あなたはAという結果が得られたのはBが原因である、という考察をしていましたが、Cが原因である可能性はないのですか?
ご質問ありがとうございます。Cの要因は検討できていなかったのですが、Cの要因によって~が起こり、Aの結果となる可能性があるという理解であっていますでしょうか?
そうですね。Xさんの論文では、別試料の結果に対してCの要因にスポットを当てた考察をされていたと記憶しています
ご教示いただきありがとうございます。
確かに、別の評価手法ではCが要因となる可能性がある結果も得られているため、さらなる追実験によりこのあたり詳細に原理追求できる可能性があると感じました
仰るとおり、その評価の結果次第で原因が特定できそうですね。続報を期待しています
はい、追実験がんばります。参考になるご意見ありがとうございました
いかがでしょうか?
重要なポイントとしてはまず、はじめの質問に対して直接的に回答できない状況においても自分なりの言葉で逆質問し、質問者の意図を探る応答をしています。
これにより自分で考えている雰囲気を出せるので、これまでの発表そのものも自分自身で考え抜いて考察したんだという印象を与えられます。
次に、質問者のさらなる意見を受けて、少し遠くて間接的な結果から無理矢理にでも関連付ける回答をしています。(「別の評価手法ではCが要因となる可能性がある結果も得られており…」)
そして、少しでも関係がありそうな評価手法を「質問者の提案を実証するための次の一手にする」という意思を示しています。(「…さらなる追実験によりこのあたり詳細に原理追求できる可能性があると感じました」)
これによって、質問者に「自分の意見を素直に聞いてくれた真面目な学生だなあ」というポジティブな印象を持たせた状態で、この質問を無事に終えることができました。
答えられなさそうな質問だとしても、ゼミのときのように提案を貰っているんだと思えれば自分なりの言葉で素直な回答ができます
よく先輩などから言われるアドバイスとして、
「その可能性は考えていなかったので参考にさせていただきます。アドバイスいただきありがとうございます」
と答えれば逃げ切れる、というものがあります。
しかし、これは正直言って最悪の回答です。
質問する教授も逃げるためのテンプレ回答だなということは分かりますし、何も考えていない人なんだなという印象しか残りません。
分からないところは分からないで、素直に(自分なりの言葉で)聞き返すほうが遥かに好印象になります。
自分なりに考え抜いている雰囲気を伝えたり、自分のアイデアの先に良い発見が必ずあるんだという確信を持っている様子が伝えられれば、非常に大きな加点となるでしょう。
なんとなく感覚はわかったような気がします。まずはゼミ発表のときにその場で自分なりに考える様子を見せる癖付けをしてみようと思います!
【まとめ】賞をもらって好循環を作り出そう!
本記事では、受賞することのメリットと受賞するためのコツに関して紹介してきました。
都会から離れた地方では規模の小さな支部講演会が開催されることが多く、そのような小規模学会では競争相手が少なく受賞される可能性が圧倒的に高くなります。
受賞するための取り組みの中で、資料作成能力や論理的思考力といった「スキル」を伸ばしたり、その成果をもとにした給付型奨学金獲得や第一種奨学金の返還免除に繋がります。
このような大学生/大学院生だからこそ利用できる金銭獲得制度への採用のためにも、積極的に学会発表に参加し学会賞受賞を狙っていきたいですね。
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もちろん、学会賞の受賞は就職活動においても高く評価されます。
本記事の内容を是非実践し、大学院生活で成果を挙げるための好循環を作り出しましょう。
以上で学会で受賞するためのポイント解説は終わりです。
ご不明点等有りましたら、お気軽にツイッター「@Washimaru_UNIV」までご質問ください。
お疲れ様でした!
\給付型奨学金や教科書高価売却など!/